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音楽と長期記憶

こんにちは LaLa Gift 代表の松本恵です。


発達障害児を含め3人の子育てを経験し、

また長年ピアノ教室を主宰して日々小さいお子さんたちと向き合うなかで、

気づいたこと、思うことをお伝えしたいと思っています。


前回、育児に歌を利用してきた自身の経験談をお伝えしました。


最初は泣き止まない長女にイラッとした時に

思わず口をついて出た、

「なんで泣くの〜?なんで泣くの〜?」

というヘンなメロディー付きの一節でした。


歌いながら、なんだかおかしくて自分で笑ってしまい、

結果としてリラックスできたことを覚えています。


赤ちゃんと目を合わせながらたくさんお話ししてあげることが大事なのは、

もちろん私も知っていましたが、 返事をしない赤ちゃん相手にずっと喋っているのって、

正直、ちょっと虚しくなるというか、疲れてしまうと

私は思っていました。


その点、歌ならエンドレスで歌っていられます。

おんぶしながら家事をする時はもちろん、

「あ〜ん」と口をあけて欲しいとき、

いっしょにお風呂に入るとき、

少し大きくなってからはトイレトレーニングでうんちが出るのをまっているときなんかも、

適当な歌詞とメロディーで歌いながらコミュニケーションをとることで、

長女のときはさほど育児に煮詰まることもなく、

むしろ楽しんで子育てできたと思います。


2歳離れて生まれた長男が生後4ヵ月で難しいタイプのてんかん発作を起こし、

入院治療・療育となってからの話はまた別です。 長男に対しては赤ちゃん体操で身体を動かす時に歌は必須でしたし、

小学生くらいになって言葉が遅いのに勝手に遠くまで行ってしまって

迷子になるのが心配だった時期には、

「ゴー・ロク・ニー・ロク……♪」と家の電話番号をメロディーにのせて

覚えさせました。 音感の良かった息子は歌にするとすぐに覚えたからです。



お風呂の歌を聞くとシャボンの匂いがする!

息子の件はさておき、小さい頃からずっと歌って育てた長女の話です。


彼女が20代半ばも過ぎたころ、そういえば、と話してくれたこと。

「小さい頃、よくお風呂の歌を歌ってくれたじゃない?

あのメロディーを聞くとね、今でもなんかシャボンの香りがふっとよみがえるのよ」


これにはびっくりでした!


お風呂の歌は2つか3つありましたが、長女が幼かった頃、よく歌っていたのは、

「ゴセックのガボット」という有名なクラシック曲のメロディーに、

「おふろだおふろだ、うれしいな〜

おふろだおふろだ、たのしいな〜♪」という

他愛ない歌詞をのせただけの替え歌です。


このメロディーは耳にする機会がけっこうあるので、

そのたびになんだかシャボンの香りがするな〜と

長女は思っていたとか。


実は、音楽は長期記憶と結びつきやすい、と言われており、

また嗅覚が長期記憶と結びつきやすいのも昔からよく知られています。


嗅覚と記憶に関しては

「プルースト効果」という言葉も知られています。

プルーストは20世紀初め、『失われた時を求めて』という大作を

著した文豪です。

物語の初め、主人公が紅茶に浸ったマドレーヌのひとかけらを口にして、

その香りが幼少時代の記憶をよみがえらせるという場面が有名で、

そこからプルースト効果という言葉も生まれました。


何かの拍子に感じた香りで、特定の場面がありありと浮かび上がるという経験を

おもちの方は少なくないと思います。


私もあるブランドの口紅の匂いで、それを初めて買って試しにつけた場面と雰囲気を

はっきり思い出します。 (余談ですがそれはカナダのアンカレッジ空港の免税店。

ヨーロッパに行く時にアンカレッジを経由したというと、

世代がかなり上だとすぐばれますね笑)


長女の話に戻ります。


彼女の場合は香りの記憶にさらに、音楽の記憶が結びついているようです。

ちなみに石けんの香りから「お風呂の歌」が思い出されることはないそうで、

記憶の鍵は香りではなく音楽の方にあります。

それを歌っていた母親や父親の声、また歌詞とは無関係に、

単純にメロディーだけ聞いても記憶がよみがえるというのですから、

メロディーと長期記憶は相当強く結びついているといえるでしょう。


音楽と記憶のもう一つの例として長女は、

『モルダウの流れ』というクラシックの名曲と、

ある種の浮遊感が結びついていると言っています。


これは夫がスメタナ(チェコの作曲家)のオーケストラ曲に合わせて

小さな娘を両腕に横抱きして大きく左右に揺らしてあやしていた時の記憶のようです。

2歳にもならない頃のことが身体的記憶として残っていて、

それを特定のメロディーが想起させるということに驚かされます。


娘の話ではありませんが、胎内で聞いた音楽を覚えていたという音楽家のエピソードなどもあり、

別の機会にご紹介したいと思います。 認知症の高齢者の方が、幼い頃に覚えた歌に反応して表情豊かになったというのも よく見聞きすることですね。

音楽と長期記憶の関連は、間違いないと思ってよいでしょう。




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